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彼女を見ていると、なんだか楽しくて。
いつもの空っぽの自分とは少し違う自分になれてる気がする。
世界に色が“満ちる”んだ。
「馬っ鹿じゃない」
彼女はふんっと鼻を鳴らし、威勢よく言い捨てると、力を緩めた俺の手の中からするりと逃げ出した。
そして、バタンと世界を隔絶するような音がして、俺は1人、そこに取り残されてしまった。
「……ふっ。ははっ……」
何故か溢れてくる笑いを漏らしながら、徐にその場へ仰向けになって寝転んだ。
「空ってこんな色だったっけ……」
視界に広がる、まだ青が残るオレンジのグラデーションを織り成す空に手を伸ばす。
「……みちる」
彼女の名を呼んだのか、それとも少しずつ色を成していく心を言ったのか。
無意識にそう呟きながら、伸ばした手に掴んだ何かにそっとキスをした。
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