それを何と呼ぶ?

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……まーた、屋上。 だけど、俺を通り過ぎてもっと上の、多分屋上を見上げる彼女は、きっと俺に気付くことも視界の端にもいれることもしないで、風景の一部くらいにしか思ってないんだろう。 しゅんとしながら、ひたむきに屋上を見つめる彼女を映していると、なんだか胸がざわざわした。 休憩の終わりを意味する笛の音が再び高らかと響き、はっとした彼女は慌てて顎を引いた。 そして、ふと上げた視線の先に俺の姿を見つけて、この上なく嫌そうに顔を歪めた。 「ははっ」 その予想通りの反応がおかしくて、手を振りながら笑い声を漏らす。   「きーりーしーまー」 次の瞬間、背後で待ち構えていた中村の、恨めしそうな声が背筋をなぞった。  
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