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「授業も聞かずに愛想振り撒いて、楽しそうじゃないか」
「そりゃもう」
威圧的な笑顔とねちっこい嫌味をあははと笑い飛ばすと、例の如く教科書が頭上に降ってきた。
「386ページ、5行目から。読んで」
「はーい」
頭をさすりながら気のない答えを返し、言われたページを探す。
その横目でグラウンドを見やれば、まだその場に留まって居た彼女と目が合った。
冷ややかな顔をこちらへ向けて動かす唇を読めば、“バーカ”と、とことん冷たい。
そして何故か勝ち誇ったような表情を浮かべて颯爽と駆けていく。
「桐島、さっさと読め」
その、少し幼稚な行動が堪らなく可愛く思えて。
中村の急かす声なんかもうどうでもよくなって、込み上げる笑いを堪えるのに必死だった。
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