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屋上に繋がるドアの前の踊り場。
空気が他より少し冷たくて埃っぽい、ひっそりとしたその場所で、俺は彼女を待っていた。
来る保証なんてどこにもなければ、宇佐美って男が今日もまた屋上に居るのかも定かでないし、確かめる気すらなかったけれど。
ただぼんやりと、会えたらいいな、くらいに考えていたら、会えた。
「何か用ですか」
面倒臭そうに溜め息を吐いて刺々しく尋ねる彼女に、俺はにっこりと笑って「別に」と答えた。
すると、俺を睨む彼女の目は、一層鋭いものに変わる。
「からかってるならやめてくれない。迷惑だから」
彼女は吐き捨てるようにそう言って、俺の横を通り過ぎる。
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