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「まあまあ、そう固いこと言わないで」
にっこりと笑顔を浮かべるその裏で、ドアの隙間に足を滑らせて、力一杯ドアノブを引いた。
向こうもそうはさせまいと必死で応戦してくるから、本来の目的も忘れて引っ張り合いに熱が入る。
「あーっ、もう、面倒くさい!」
最終的にこのやり取りこそが時間の無駄だと気付いたのか、疲れ果てた声とともにドアが開け放たれた。
予期していなかった展開に、思い切りドアで顔を打ち付けた俺を、弟の清吾は鼻先で馬鹿にするように笑った。
「……で、何?」
清吾は小さなソファにどかっと腰を下ろし、難しそうな分厚い本を片手に尋ねた。
「あー……うん、いや、実はね?」
「なんでもいいから、早くして」
もじもじしながらもったいぶる俺に、清吾は睨みを利かせて凄んで見せた。
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