それを何と呼ぶ?

20/44

14263人が本棚に入れています
本棚に追加
/263ページ
「なんかさ、こう……心臓の辺りがギューッてなって、チクチクッてして、それからざわざわってするんだよね」 身振り手振り、擬音語だらけで、この不可解な体の不調を訴える。 清吾は頭がいい。 俺も引けを取らないと自負しているけれど、やっぱりお互いに得意不得意はある。 清吾は俺と違って常に冷静沈着で、分析力に長けているし、知識も豊富だ。 きっと清吾なら、俺には得体のしれないこの不調の原因を知っていて、打開策を見つけてくれるだろう。 「とりあえず、右京はもう少し表現力をつけるべきじゃない」 哀れむような目で俺を見てから、清吾は手元の本に視線を落とした。 「……で、これって何なんだと思う?」 パラッと、ページを捲る乾いた軽い音が俺の緊張を煽って、ごくりと息を飲む音が静かなその部屋に響いた。  
/263ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14263人が本棚に入れています
本棚に追加