それを何と呼ぶ?

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「じゃあ、病気って何の病気?」 槙はそう尋ねながら前の席の椅子を引いたと思うと、本来の向きに逆らうように座って背もたれに腕を置いた。 「知らない」 「何それ」 少し真面目な顔をしていた槙は、呆れたように笑う。 「だからさ、心臓の辺りがギューッてなって、チクチクッてして、それからざわざわってするんだって」 だらしなく体を折り、机に顎をのせて説明する。 また心筋梗塞だとか心不全だとか、おっかない病名を並べられるのだろうかと思いながら、相手が槙である事を思い出してホッと安堵した。 槙の脳内辞書には小難しい言葉は勿論のこと、10画以上の漢字さえインプットされていないだろうから。  
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