不機嫌なあの子

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「生憎、あんたみたいな男に教える名前は持ち合わせてないの。さっさとこの汚い手、離してくれない」   女の子にお願いされるのは慣れているつもりだったけれど、ここまで高圧的なのは未体験だ。 勿論、素直に「はい、そうですか」と手を離す筈がない。   「やだって言ったら?」 試しにそう尋ねてみると、彼女は今にも噛み付きそうな勢いで、俺を睨み付けた。 まるで……そう、威嚇する猫みたいに。 「馬っ鹿じゃないの」 彼女はいきなり掴んでいる方の手を振り上げたと思うと、すぐさま勢いよく振り落とした。 そして、その反動に耐えかねた俺の手は、簡単に振りほどかれてしまった。  
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