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「恋も知らないお子ちゃまな右京に、恋とはなんたるかをこの百戦錬磨の裕司様が教えてしんぜよう」
ふんぞり返って言う槙を、冷ややかな視線で見つめるのには理由がある。
「フラれまくって鍛えぬかれてるもんな」
「ちょっ、うっきょん!」
気恥ずかしそうに慌てた槙は、ガタガタッと騒々しい音を立てながら、俺の口を塞ぎに立ち上がった。
からかってみせるけれど、槙は容姿といい、人当たりのいい性格といい、モテる要素は十分に持っている。
それなのに失恋記録を更新し続けているのは、おそらくいい人過ぎるからだろう。
あとは女を見る目がないのと、ちょっとお馬鹿過ぎるのと、お調子者のせいかな。
とにかく、最終的に“いい友達”止まりだ。
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