14262人が本棚に入れています
本棚に追加
「それで、恋というのは、だね」
再び椅子に腰を下ろした槙は、ゴホンと咳払いをしてみせた。
語調を変え、咳払いをしたところで威厳は皆無だけど。
「簡潔にお願いね」
とりあえず、話が長くなりそうな予感を察知して、そう釘を刺した。
すると、またしてもわざとらしい咳払いを返してきて、静かにと訴えているようだ。
「恋の始まりっていうのはね、相手の事がなんとなく気になって、その子の姿ばっか探しちゃうんだよ。その子が誰より一番可愛く見えるし、笑った顔を見たいって思うし、他の男と居るとムカつくし、ギューとかチューとかしたくなって、それから……」
「もういいよ」
手を突き出し、まだまだ続きそうな、そしてどんどん低レベルになっていく槙の講話を無理矢理遮った。
最初のコメントを投稿しよう!