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「残念ながら、フラれる自信しかないよ」
肩を竦め、そんな確信を露にすると、槙のおっかない目付きはゆっくりとその鋭利さを失って、丸くなった。
「なんたって俺、嫌われちゃってるからね。それにその子、好きな奴居るし。……でもさ、自分の気持ち言わない事には、相手に何も伝わんないじゃん。伝えたら、少しは何か変わるかもって希望くらい、持ちたいし」
それに、なんかもう、伝えたくて仕方ない。
自分の中に芽生えた、初めての気持ち。
「そっ……そうっ!伝えなくちゃ、始まんないんだよ!!」
槙は何故か、興奮気味に鼻息を荒くして立ち上がり、俺の手を強く握った。
うららかな昼下がり。
手を取り合う男2人に向けられたクラスメイトの視線は、それはそれは冷ややかだったけれど、初めて得た感情に、俺の胸は熱くなるばかりだった。
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