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「とにかく、そういう訳だから。頭の片隅に少しくらい留めておいてよ」
いいカッコしいの俺は、サッと笑顔を作ると、おどけるように言った。
それが裏目に出たようで、彼女は一層疑り深い目で俺を睨む。
「引き留めて、ごめんね。彼氏待ってるんでしょ?ほら、行って行って」
それとなく探りも入れながら、追い払う素振りをしてみせる。
「かれ……っ!?ちっ、ちが……っ!!」
狼狽えた彼女は動揺のあまり、一気にその不機嫌な顔を真っ赤に染め上げ、声を荒らげた。
……あぁ、こんな顔もするんだ。
可愛いと思うのに、何故か胸はズキズキと痛んで、なんだか無性に泣きたくなった。
「やっぱりからかってるんじゃない。最っ低、馬鹿、女ったらしっ!大っ嫌い!!」
投げ捨てるように罵倒して、彼女はあっという間に屋上の扉の向こうへと消えて行ってしまった。
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