それを何と呼ぶ?

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「伝わんないなぁ……」 壁に寄り掛かり、項垂れて溜め息混じりにそう呟いた。 人に何かを伝えるのって難しいんだな、なんて改めて染々思う。 ここにきて初めて、立ちはだかる壁というものに遭遇して、いかにこれまでの自分が空っぽだったかを思い知ってしまった。 自分の気持ちを信じて貰えない、このもどかしさ。 日頃の行いが悪いからだと言われたらそれまでで、もっと真面目に、誠実にやってこればよかったなんて後悔は、考えるだけ無駄だ。 今までの自分をなかった事になんてできないし、だからこそ今があるのだと、知っているから。 「気長に頑張るしかないか」 そう思う事自体、なんだかいつになく前向きで、楽しいから不思議だ。  
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