不機嫌なあの子

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「うん、可愛い可愛い。女の子はそうでなくっちゃね」 にっこりと笑ってみせた後、踵を返しながら女の子たちの背中に手を回し、続くよう促す。 すっかり機嫌をよくした女の子たちは、軽やかに体を翻し、黄色い声を弾ませながら前を歩き始めた。 その一歩後ろを歩き、遠くに甲高い声を聞きながら、にこりともしなかったさっきの1年生を思い出して、こっそりと背後を振り返った。 二重瞼に、黒目がちの大きな瞳はつり上がって、それこそ猫のようで。 肩まで満たないショートボブの髪は、手を加えた事がないのか美しい漆黒で、さらりと揺れていた。 化粧っ気のない白い肌と華奢な体。 取り立てて美人な訳でもないけれど、目を惹く独特の存在感があった。 当然ながら、彼女の姿は既にもうそこにはなくて、ひっそりとうすら寒そうな廊下だけが続いている。 居ないとなればこれ以上、あの挑発的な鋭い瞳の持ち主の事を気に留めていても仕方がない。 ……そう思うのに、どうも心は落ち着かなくて、何度も肩越しに背後をこっそり振り返っては、その姿を探してしまった。  
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