14262人が本棚に入れています
本棚に追加
「やっぱ、俺の為にあるみたい」
くっと笑って、心の中でその名を呼ぶ。
恋って、マジですごい。
こんな風に思う俺は単純なのかもしれないけれど、そんな単純なものが、ずっと俺には足りなかったんだろう。
「え、何が?」
俺の小さな呟きを耳聡く拾った女の子は、きょとんとしたまま首を傾げて尋ねてくる。
俺は「別に」と素っ気なく答えて、緩む口元に人差し指を添えて隠した。
「それで……ごめんね?そういうの、もうやめる事にしたんだ」
笑ってそう返し、少し先で俺を呼ぶ槙に応えるように前を向けば、まだ掴まれたままだったシャツの裾がピンッと張って、進むのを阻んだ。
最初のコメントを投稿しよう!