特効薬、ください。

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「やっぱ、俺の為にあるみたい」 くっと笑って、心の中でその名を呼ぶ。 恋って、マジですごい。 こんな風に思う俺は単純なのかもしれないけれど、そんな単純なものが、ずっと俺には足りなかったんだろう。   「え、何が?」 俺の小さな呟きを耳聡く拾った女の子は、きょとんとしたまま首を傾げて尋ねてくる。 俺は「別に」と素っ気なく答えて、緩む口元に人差し指を添えて隠した。 「それで……ごめんね?そういうの、もうやめる事にしたんだ」 笑ってそう返し、少し先で俺を呼ぶ槙に応えるように前を向けば、まだ掴まれたままだったシャツの裾がピンッと張って、進むのを阻んだ。  
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