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「……えっと、ごめん。離してくれない?」
少し困りながらも、顔には出さないよう、努めて柔らかく声を掛ける。
「……なんで?」
俯く女の子の、苛立ちを含んだ声がポツリと落ちる。
「だってほら、授業始まっちゃうし……」
「そうじゃなくて!」
その子が本当に聞きたい事が何か、それに気付かない振りをしてはぐらかした答えはきっぱりと否定されてしまった。
責めるような上目遣いに困り果て、逃げるように視線を逸らし、引き下がる気配のない手を盗み見て、深い溜め息を漏らす。
「……特別な子が出来たから、かな」
柄にもなく真面目腐った顔で答えた途端、女の子はその表情の色を変えた。
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