特効薬、ください。

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「俺が駄目なんだ。これ以上、その子の心証悪くしたくないし……それに、遊んだとしても楽しめない」 きっぱりと言い切れば、女の子は酷く傷付いた表情で俺を睨んだ。 睨まれるよりずっと、その表情が胸に突き刺さって痛い。 「そんなの、右京らしくない」 吐き捨てるようにそう言って、女の子は踵を返し、その場から走り去ってしまった。   「右京らしくない、か……」 投げ付けられた言葉をなぞって、吐き出すように短く苦笑する。 自分らしさの欠片もなく空っぽだった俺が、その場限りの楽しさの為にフラフラしていたくだらない俺が、女の子たちにとっての“俺”で。 それ以外の何者でもなくて。 そんな“俺”を求められてしまうのは当然の事だ。 今の俺は、そんなに駄目? 存在価値もない? こうやってまた、近付いてくる女の子を蹴散らして、傷付けなくちゃいけない? 浅はかだったかつての自分を、今更悔やんだところで何も変わらないと分かっているけれど、様々な思いが複雑に入り交じって、息苦しく、悲しくなった。  
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