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「……愛だね。とうとう芽生えた?」
勝手に綻んでいく頬をひた隠しにして、おどけて見せる。
「くだらない冗談が言えるなら、私の思い違いね」
けれど彼女は、冷たい笑顔でかわして一蹴する。
そして再びドアノブを捻ったから、慌てて立ち上がり、それを制するように彼女の手に自分のそれを重ねた。
「待って」
無防備な彼女の猫目がまっすぐ俺を見上げてくる。
それはいつもの調子で冷たく「何?」と、直接心に問い掛けてくるようだった。
「……俺らしいって、何かな」
逸らそうとしないまっすぐな視線と、ひんやりと凍るような沈黙にやけに緊張してしまう。
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