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零音のポケットから這い出、肩先で止まる
小さな手に握ったそれまた小さな赤い玉を手のひらの上に置き、狙いを定める
ギュッと握り潰し玉から溢れた煙のような霧を、一息の風を吹き学校にかけた
散々に散らばったその煙のような霧は学校全体を覆うように薄いベールを張り、やがてその霧も空気中に溶け込み見えなくなった
「完了です…さぁ門をくぐって下さいませ
楽しい学校生活になることを願ってます…」
そう言って肩先から飛び降りたおサルのロイ
亜音と零音は振り向き彼に手を振ると
「「行こう♪」」
と入って行った
元気に学校の門をくぐった二人の背中を見送る
人目のつかぬ辺りでおサルの姿から人に戻ったロイ
小さな微笑みを落とし我が主達の屋敷に足を進めた
「夕食も豪勢にして差し上げますか…」
門をくぐってすぐ零音はふと思った
門の脇に何人かの男女がジーッと入ってくる生徒達を見ている
目をギラつかせどんな小さなものも見逃さない目
「そこ!」
大きな声にビクッとした
「ちゃんとボタンは上まで留めなさい!!」
自分の首もとを触ってみたがちゃんと留めてある
すぐ隣に目を向けると、慌ててボタンを留める男子生徒が
(なんだ…僕じゃなかった…)
ホッとしてまた足を進める
彼らは風紀委員のようだ
校門に立ってあんなに小さなことまで注意するということは…
(意外と厳しいのかな…?)
そう思うも
(バレなきゃわかんないよ♪)
と思う
どんなに風紀が厳しくたって隠れて上手くやる自信があった
(バレたことないしね♪)
ちょっと余裕顔になり零音は風紀委員達の前を歩いた
そんな空気をなんとも感じない亜音
口をポッカリ開けながら興味津々に辺りを見渡す
能天気なのもここまでくると可愛いもの
周りの生徒達は新顔の二人に気付きもしない
ロイの魔法が効いている証拠だ
「おや?……今まで気付きませんでした…
あんな可愛い子がこの学校に居た…とは」
風紀委員達の最後尾
腕組み、中指でメガネを上げる生徒
レンズの中の瞳が1人の生徒を捕らえていた
「好みです…」
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