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喫茶店”Cafe Venus”の店長、高峯宗一は、暇を持て余していた。
もっとも、主に自業自得なのだが。
「どうしてこんな所に建てたんだろ、俺・・・」
ボサボサの頭を掻きながら呟く宗一
近所に高校や大学、会社のオフィスが集まっているため客には事欠かないはずなのだが
いかんせん、場所が悪かった。
寂れた商店街の店と店の間にある小道を通り、しばらくすると少し開けた通りに出る。
そこからしばらく進むと小さな看板が見える。そこが彼の経営する店だ
ちなみに、日当たりは良く、開けてはいるものの道は一本道、帰る際は来た道を戻らなければいけない。
そして周囲は全て民家の裏側。
「帰りに寄っていこうかな」という感情すらも湧き起こさない。
今日の客は6人。これでも多い方である。
宗一はふと顔を上げ、ズレた眼鏡をかけ直し
「最高に暇ってヤツだ」
とキメてはみたものの、勿論誰も聞いていない。
店に響く自分の声にえもいわれぬ寂しさを感じた宗一は
(よし、もう店閉めてどっか行こう。)
営業を放棄したのであった
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