現実

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「帰りなさい!!!!」 「帰れません!」 いきなりだが、俺は声優事務所に直接乗り込んだ。 さっきオークションで落札した『ブツ』に直接声優さんにサインをいただく…そういう計画だ。 今、繰り広げられている会話を見れば一目瞭然だが…こうなることはもちろんわかっていた。 しかし俺は根性で引き下がらない。 「俺は秋宮さんにサインをもらわないと…帰れないんです!!」 「わけがわからない!それから今、何時だと思ってる!!」 そう…今は23時過ぎ…普通は対応してくれるような時間じゃないはずだ。 「すいません…で、でも!どうしてもサインをいただかないと…!」 「くっ…!しつこいな…通報するぞ!」 …ダメ…みたいだ。 「わかりました……すいません…失礼しました」 俺は自分の愚行に恐れ入ったよ。 やっぱ…現実そんな甘くねぇよな…。 「現実…?」 あれ?これ…夢、だよな? たまに夢と現実の区別がつかなくなる。 「お、おい!君!」 「…はい?」 「明日ちょうど秋宮のサイン会があるんだが、チケット制でな。ま、まぁ君も何か理由があってサインが必要みたいだからな。チケットあげようではないか…」 「ほ、ホントですか!?」 「あぁ…実際、もうチケットは完売して手に入らないんだがな。…特別だ」 「あ、ありがとうございます!!」 翌日。 「ふあぁ…」 俺は魔花神の声優の秋宮紫衣奈さんのサイン会場に来ていた。 昨夜は一睡もせずに、オークションで落札した『ブツ』を直接出品者の所へ受け取りにいった。 おかげですっげぇ眠い。 時刻は早朝5時20分。 「…?」 あと10分でサイン会開始なんだが…全然人がいない。 俺を含めて…5~6人くらいか? まぁ早朝だもんな…って、いくらなんでも早すぎだろッ!? サイン会って10時とかそんなんじゃないの!? そして開始時刻時。 「それではサイン会を始めます」 スタッフの人が合図する。 「…こ、これだけなのか…」 開始時刻になっても結局6人だった。 そりゃプレミア付くわ…。 俺は列(5人)に加わる。 その間に『ブツ』を用意。 そして俺の番になる。 「あ…これにお願いします」 「………君が昨夜事務所に押し掛けた、という?」 「え?あ、はい。すいませんでした」 「いえいえ。…そんなに私のサイン欲しかったの?」
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