準備

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俺は季織と別れ、一人で本屋へ立ち寄った。 とりあえずマナーの本でも立ち読みしようかな、とまだまだ弱気な俺。 「…うおぉぉぉぉ!」 …ダメだ。 全部の本がビニール袋で包まれてる。 「ハァ…」 買うしかないかぁ、そう思い、本に手を伸ばす。 すると、誰かと手が触れ合った。 同時に同じ本を手に取ろうとした形だ。 「あ、スイマセン」 「いえ、大丈夫です」 (どんな人だろう?) 顔を見る。 「は!?」 ビックリした。 「どうかなさいましたか?」 「えぇっと…和…久か?」 そうなのだ。 この人は俺の唯一無二の親友(只今絶交中)に似ている…どころか全く同じ顔だったのだ。 「かずひさ?いえ…違いますけど?」 「そ、そっか」 なんだ? 違うのか? 「スマン、人違いだった」 「いえいえ、構いませんよ」 俺は混乱しながらさっきの本じゃない別の同じタイトルの本を持ってレジへ向かう。 「840円になります」 「……」 金欠だなぁ、と思いながら支払う。 「お、お客様。840円です…」 「…え?」 「1000円からでよろしいでしょうか?」 「す、すみません!」 やっべー。8400円出してた。 ―本屋を出る。 どうやら俺はとても混乱していたらしい。 家に帰るまでに4回、電柱に頭がクリティカルヒットした。 さらに、俺の家はマンションなんだが部屋を間違えて鍵をさしたり…。 散々だった。 そして帰宅。 「ふぅ…」 とりあえずコーラでも飲もうか…。 冷蔵庫に歩み寄る。 「うめぇ!」 コーラを飲み終え、俺はさっき買ったばかりのマナーについての本を読むことにする。 ビニールをビリビリ破いて、中身を開ける。 「さて…と」
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