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「善秀さん、そんな明るさはまやかしでしかありません。
本当の明るさを取り戻したいなら、生きる術を皆さんに知ってもらうことです。
例えば、不作で食べる物がなければ、不作でも育つ物を作る。
他には商人・職人として生きていく為の訓練を施してあげる等、善秀さんのような知識のある方達が先頭に立ってするべきです。」
「もちろん簡単なことではありません。
けど生きる為の目標があり、それに対して努力している姿は美しく、その顔は明るいに違いないと思います。」
「一向宗の門徒の方達は、一揆の時、南無阿弥陀仏と唱えながら、喜んで死地に赴くと聞いたことがあります。
善秀さんはそのときの子供達の顔を見たことがありますか?悲しくありませんか?」
(やべっ、ちと興奮して言い過ぎちまった。自分の悪い癖がでちまった。まぁ、これで怒られたらしょうがないと諦めて帰ろう。)
善秀「…」
善秀「…相模さん。」
「はい。」
善秀「おっしゃる通りだと思います。実は私もそのように感じておりました。死ぬ為に生きるんではなく、生きる為に生きる…。」
そう言うと、善秀さんは何事かを思い出したのか。声はあげないが、涙があふれんばかりに流れ出した。
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