日常が崩れ落ちる音。

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二○一二年七月七日。 世間一般ではこの日を七夕と呼ぶ。らしい。 織り姫と彦星とかいうリア充カップルが会いたくて会いたくて震えてるのを見ながら人間はそこにロマンを感じて……、その後は各々。 分かりやすく言えば夏のクリスマスみたいな物。らしい。 更に簡単に言えば、カップル達の会う口実の一つ、だ。 時刻は夜の八時を回った辺り。日は沈み、綺麗な星空が出番を今か今かと待ち望んでいた。 閑静な住宅街を歩く影が一つ、うなだれていた。 「あぢぃー。溶ける。間違いなく俺溶ける。これが独り言だって事が恥ずかしくてなお溶ける。……確実に溶けるな。俺はアイスクリームだ」 人影はブツブツ何かを呟きながら北に向かってダラダラと歩く。 ミディアムヘアーの茶髪が汗に塗れて首筋にベチャリと張り付いているのを鬱陶しそうに右手で払う人影--桂零は、翌日学校があるというのに何故かこの時間に呼び出した親友の家へと向かう所だった。 「あー、糞。温暖化なんて知らねぇから地球を丸ごとクーラーの冷風で包んで欲しい」 ゼーハーゼーハー言いながら、桂零は額の足を手の甲で拭って払い捨てた。
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