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「お兄ちゃんの血飲ませて?」
--吸血鬼だ。
「だが断るッ!!」
なんで? と小首を傾げる妹はそれはそれは可愛かった。零もそう思っていた。
だが、血を飲ませろ、なんて素直に頷けるはずがない。
人間と人間の……、そう、例えば、カップル同時のイチャイチャだったらまだ可愛い冗談とエッチな妄想で済むだろう。だが、相手は妹--吸血鬼なのだ。
決して卑猥な意味ではない意味で精を抜かれ、死ぬ。
そうなっても可笑しくないのが桂零を取り囲む現実なのだった。
「無理無理。大体母さんから血は一日一回って言われてんだろ」
「だからお兄ちゃんに頼んでるんだよ?」
由紀は母親である美由紀から一日一回血液(出所不明)を与えられている。
だが、一日一回のソレのみで、一日一回以上は飲むなと言われているのだ。
だからこうして、兄の零にこっそりネダリに来ているのであろう。
「無理なモンは無~理。母さんに頼んでくれ」
そう行って天井に視線を戻して、アレ? と零は気付いた。
パフッ、と軽い感触が腹の辺りに沈む。
視線の先には困った様な表情を浮かべる由紀。
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