剥がれ落ちる景色。

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「え、なんで由紀……、馬乗りに、」 気付けば、馬乗りになった由紀。 「実力行使!」 由紀はニカッと笑って、前に--零の方へとユックリと倒れ込み始める。 まるでキスするかの様な緊張感が零を襲うが、事実そうではない。 由紀の可愛らしい真っ白な顔が向かうのは零の首筋。 「うぇ!? ちょっ、おまっ!! 由紀!?」 「えへへ」 笑った由紀の吐息が首筋に当たってくすぐったい。だが、決して興奮は出来ないのだ。 まず、相手は妹。そして何より、その妹は首筋をペロペロする訳ではなく、噛み付くのだ。挙げ句には血を吸う。 「……ッ!!」 ふわっ、と暖かい感触が首筋に走ったと同時。 ガチャリ。と再び扉が開く音が部屋に響いた。 由紀の動きもソレに反応して止まり、二人は扉の方へ視線をやる。そこには--、 「あ、あ、ああ……、」 「青井!?」 青井愛。 「アンタ達兄妹で何してんのよ!?」 犯人を見付けた名探偵の様に二人をビシッ!! と指差して驚き全開で叫ぶ青井。 零からすれば勝手に家に上がって来た青井にビックリだが、今はそれどころではない。
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