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その様子に気付いた桂零は慌てて顔の前で両手をバタバタと振り回して、
「ちょっ、落ち着け!! ちょっとからかっただけじゃねぇか……!!」
言い訳。だが時既に遅し。
美女の美女らしい美しき面持ちが一瞬にして変貌する。
美女から鬼へと変わった元美女。
「ひぃいいいいいい!?」
怒りからブルブルと震え出した鬼から逃げる様にダッと一瞬で立ち上がった桂零は、そのまま猛獣にでも終われる兎の様に駆け出し……、逃げ出した。
◆
「な、ん、で、逃げるのよぉおおおおおおおお!!」
「追うから、つーかその質問は理不尽じゃねぇか!?」
あれから数十分は経っただろうが、桂零は鬼もとい元美女とのリアル鬼ごっこをまだ続けていた。
走り回ったとはいえ、住宅街の網目状の路地を何周かしただけなので対して移動はしていなかった。
真夏。夜とはいえ乾いた暑さが支配している。
そんな中を走り回っていたのだ、桂零にしろ鬼にしろ汗だくで仕方がないのだろう。
その足取りは、あっという間に力を失って、やがては止まった。
二人とも肩で息をしながら、
「はー、はー。おまっ、走りすぎ、はー……」
「あんたが……はぁはぁ、逃げるから、はー、でしょうが……」
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