43人が本棚に入れています
本棚に追加
青井の表情が変わった事に警戒して桂零は視線を空に泳がせる。
『お、マジ? 今も青井いんの?』
(何がっついてんだ)
「いるぜ」
すると、電話の向こうの声が跳ね上がった。
簡単に言えば、三沢のテンションが上がったのだ。
『よし零。お前どうにかして青井連れて来い』
「はぁ!?」
『頼んだぜ。後、早くな。じゃっ』
ブツリ。と通話は一方的に断たれた。
おい、と言おうとしたが喉の手前まで来た所で止まり、表に出る事はなかった。
ついでに、と通話の終わった携帯電話のディスプレイで時刻を確認すると八時半を回っていた。
急がないとな、と思いながらポケットに捩込んで一度深呼吸。
意を決して、桂零は青井と向き合う。
……が、しかし。
ムギュッ、とかムニュ、とかそんな可愛らしい音はしなかった。
顔面がグシャッと潰れたかと思った。思ってから、青井の跳び蹴りが顔面にヒットしたんだと後ろに倒れながら気付いた。
「さっきの何か嫌そうな視線は何よ!?」
ゴツン、と背中と地面がぶつかってから、
「な、何でもないんだ。マジで」と夜空と向き合った。
最初のコメントを投稿しよう!