人形の家

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 校門を抜け、敷地の外周を軽く流しながら硅は先を走る先輩の背中から目を移し、雲に巻かれて淡く煙る山々を眺めた。  あの山以上に、未来は白く霞んでいる。 「すみません。崎坂先輩……ですよね?」 「え?」  ふいに呼ばれ、思考を引き戻された硅はぼんやりとした頭のまま反射的に振り向いた。いつの間にやって来たのか、新入部員の百瀬が傍らで柔和な笑みを浮かべている。 「どうして僕の名前……」 「早く部に慣れようと思って、先輩達の名前を教えてもらったんです」 「へえ、感心だね」  素直に硅は言った。すると、百瀬は照れたのか顔の前でパタパタと手を振って、 「んなことないッスよ。普通ですって。ほら、なんか用事あった時に顔と名前が一致してないと困るから」 「いや、単純に偉いよ。だって僕なんか自然に覚えるからいいやって全然努力しなかったもん。だから、全員の名前覚えるのに半年はかかったし」 「部員の数、今よりも多かったんスか? 今って大体二十……」 「二十四人。今日からは二十五人だけどね。でも、あの頃も人数的には今とあまり変わらない」 「で、半年? 先輩、それちょっと時間かかりすぎッスよ」呆れたように、百瀬。   「え、そうかな」 「……先輩は、ここが地元なんスか?」  
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