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帰り道、いずみ屋に寄って肉まんを食べるのが硅達三人の習慣になりつつある。店の前にある自販機に背を預け、熱々の肉まんを頬張ると壱伊は満足そうに息をついた。
「あー、やっぱ練習終わった後の肉まんはたまんねぇな」
「美味いよねー」頷きながら硅が受ける。
「この時間が一番幸せだわ。開放感っつーの? なんつーか、『一日が終わったー』みたいなさ」
「わかる。家に帰ったら宿題しなきゃなんないし、何だかんだで自由じゃないもんね」
「嫌なこと思い出させんなよ。こんな時ぐらい勉強の話はナシ」
眉を顰めて壱伊はそう言うと、また肉まんにかぶりついた。
「宿題って英語の?」壱伊の言葉を平然と無視して、久世。
「うん。リーダー。去年だか一昨年だかの全国模試で出た問題を解いてくるようにだって。久世のクラスも今日リーダーあったんだっけ?」
「あった。次の授業で皆にあてるって」
「げ、マジ?」
ふいに壱伊が素っ頓狂な声をあげ、頬を引きつらせながら硅を見遣った。
「んなこと言ってたっけ?」
「言ってたよ。しかも、かなり上機嫌で。イチ、寝てたろ」
「失礼な奴だな。ちゃんと起きてたよ。ただ……腹減り過ぎて意識が朦朧としていただけだ」
「どっちにしろ話を聞いてなかったんでしょ」
硅に切り返された壱伊は決まり悪そうに笑い、
「そういえば、硅。お前んとこに新入部員入ったんだって?」
と、無理やり話題を変えた。
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