1-1 自覚

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「矢沢実咲子(やざわみさこ)です。稲田三中出身です。中学ではバスケしてました。高校でもバスケ部に入るつもりです。えー…よろしくお願いします」 「それだけ?」 私の素っ気ない自己紹介に先生から突っ込みが入る。 そんなこと言われても… 「そう、ですね」 多少たじろぎながら答えるとどこかから「趣味はー?」という声が飛んできた。 「趣味…は、特にないです。よろしくお願いします」 もう一度頭を下げると、パチパチと小さな拍手が起きた。 自己紹介は苦手だ。 名前の頭が「や」の私は、だいたい自己紹介が一番最後。 私がする頃には、教室内には「いい加減飽きてきたな…」という空気が流れていて、小心者の私はいつも焦って手短に自己紹介を終える。 もっとも、たっぷり時間を与えられたところで語るべきエピソードもないのだけれど。 部活しかないからなあ私は。 ・
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