始まりのプロローグ

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なのでそこから取ったあだ名である“オカリン”も同じく嫌いなのだ。 というかオカリンって。 銭湯に置いてある黄色い桶みたいじゃないか。 まゆり「でね、オカリン。えっと、教えてほしいんだけど」 どうやらまゆりには言っても通じないようだった。 かれこれ5年は言い続けてきてこれだから、半ば諦めているが。 まゆり「これからここで、なにか、始まるのー?」 倫太郎「お前は、それも知らずにここまで俺についてきたというのか」 まゆり「うん」 にこやかにうなずいている。 東京、秋葉原駅前にある、通称“ラジ館”。 その8階は、イベントスペースになっている。 倫太郎「これからここで始まるのは、ドクター中鉢の記者会見だ」 ドクター中鉢というのは発明家である。テレビなどにもよく登場する有名な人物で、特許数もそれなりに持っている。とはいえ世間一般の目からは所詮“色モノ”としか見られてないが。 まゆり「記者会見?でもー、記者さんなんて見当たらない気がするよ?」 まゆりの言う通りだった。 試しに奥にある会場をのぞいてみたが、記者らしい人間もカメラマンらしき人間も、1人としてここにはいない。その時点で記者会見ではなくただの発表会と化してしまっている。
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