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「雪野、珍しいな。
お前が遅刻するなんて」
逢氷のクラスの担任は、逢氷が教室に入った瞬間にそう言った。
逢氷はそれに小さく謝罪の言葉を紡ぎ、すぐに自分の席についた。
担任は逢氷が席に座ったのを確認すると、すぐに授業を開始した。
逢氷はイヤフォンを耳につけると、うつ伏せの状態になり、何かをメモする。
一見授業でのノートをとっているように見えるが、実は理駆のクラスでの会話を聞いたままメモしているのだ。
時々顰めっ面になったり、髪の毛をすいたり。
逢氷の異常なまでの理駆への愛情は、歪な形へと変化していく。
理駆を愛し過ぎているあまり、盗聴機を学生服に忍ばせたり、逢氷が理駆の誕生日にプレゼントした筆記用具にも取り付けた。
挙げ句の果て、逢氷の独占欲は人並み以上だ。
理駆への執着心は、逢氷自身も知らないうちに大きく膨れ上がり、こんな狂気染みた行動を働いてしまった。
だが、逢氷はこれを悪事とはみなしていない。
理駆を守るために、必要なこと。
逢氷は自分に言い聞かせ、ずっとこの行為を繰り返してきた。
理駆のクラスでの会話をメモしたノートは、とうに20冊を越えている。
逢氷は毎回それを見るたび、書くたびにジェラシーに浸っていた。
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