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それから逢氷は、果物ナイフを携帯して学校に行くようになった。
自分を傷つけようとする輩から自分を守るため。
逢氷を犯した人間は、全員平然とした顔で日々を過ごしている。
逢氷はその姿にとてつもない怒りを覚え、ズボンのポケットに入っているナイフを力一杯握り締めた。
そのとき、逢氷を犯した一人の男子が逢氷に話しかけた。
その男子が逢氷の肩に手を置いた瞬間、逢氷の身体には鳥肌が立ち、すぐさま逢氷はズボンのポケットからナイフを取り出してその男子の首許に突き付けた。
その男子は恐怖に歪む顔を逢氷に見せ、その場にへたりこんだ。
逢氷はその男子とナイフを持つ自分の手を交互に見て、口許を上に曲げた。
(―――あぁ、なんて快感なんだ、自分に怯える奴を見るのは―――)
逢氷の悪癖の枷を解いたその男子は、二度と逢氷の前に姿を見せなかった。
高校に進学し、悪癖の存在を忘れた逢氷の前に現れたのが、笠垣 理駆。
理駆は精神病を持つ逢氷の全てを受け止め、逢氷の傍らにいる。
そして、逢氷は理駆を愛しすぎた。
あのときの悪癖が、前回とは違う形で再発する。
(…理駆を、僕だけのものにしたいなぁ…)
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