崩壊する理性

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「…ねぇ、理駆」 帰り道中、唐突に逢氷が理駆に切り出した。 「ん?何?」 理駆は逢氷に聞き返す。 「僕の家、来ない?」 理駆はここで、再び今朝見た夢を思い出した。 このまま逢氷の家に行くと…。 理駆はその考えを振り切った。 どうせ夢だ。 逢氷がそんなことするわけない。 理駆は無理矢理自分にそう思い込ませ、逢氷の家に行くことに決めた。 「入って」 逢氷は靴を脱ぎながらそう言うと、先に階段を登って自分の部屋のドアを開けた。 理駆はそれに慌てて靴を脱ぎ、階段を駆け上がって逢氷に着いていく。 逢氷は鞄を机のすぐ側に置くと、ベッドに腰掛けた。 「あ、理駆はその椅子使っていいよ」 逢氷は勉強机の椅子を指差す。 「ん?あぁ、ありがと」 理駆はそう言って、逢氷の椅子に座った。 「…ねぇ、理駆」 逢氷は静かに切り出す。 独特の緊張感が、理駆の全身を駆け巡る。 そして逢氷は、微笑みながら言った。 「ゲームやろ!」 理駆は拍子抜けしてしまった。 夢の内容と同じことを言われるのではないかと、ひやひやしていたからだ。 「おう!」 理駆は逢氷からゲーム機を受け取ると、安心感に見回れていた。 だが、理駆はまだ知らない。 理駆が見た夢は、正夢に近いものだと言うことを。
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