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逢氷は自慰に狂う。
理駆を想いながら。
その口許は笑っている。
目は虚ろだ。
「…はぁ、理駆…」
逢氷は自分の中の頂点に達すると、ベッドから出た。
そして、鍵の掛かる引き出しにある、入学してすぐに学校で撮った学級写真を取り出した。
逢氷と理駆はそれぞれ緊張に固まった顔をしており、何より二人ともが今よりも顔が幼い。
――逢氷が手に持つその学級写真は異常だった。
逢氷と理駆以外のクラスメイトは、全て黒いマーカーペンで塗り潰されていた。
逢氷と理駆の間にある微妙な距離が、それを余計に際立たせる。
どちらかというと背が低い逢氷。
一年生のときに同じクラスだった二人は、いつも一緒にいて、学級写真も二人は隣に並ぼうと逢氷は誘っていた。
だが、背の順に並んで撮らないといけないと聞いた逢氷は、落胆した。
かなり背が高い理駆は、一番後ろの段に。
逢氷は、一番前の段に。
二年生になってクラスが別れ、逢氷は本当に残念がった。
(僕と理駆がクラスが離れたのは、僕達以外の人間がいるからだ)
逢氷は、果物ナイフを持つ手に力を入れる。
(でも、ヒトゴロシはいけないって世間は言うから)
そして逢氷は、一年生の学級写真に写ってる、理駆と逢氷以外の人間を再び黒く塗り潰した。
(……僕達は、二人だけだからね?)
逢氷は妖しく笑うと、マーカーペンをペン立てに戻した。
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