崩壊する理性

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理駆はベッドの上に倒れ込み、寝返りをしながら充電してあった携帯を取った。 携帯はチカチカと光を放っており、メールか着信が来たのだと思いながら理駆は携帯を開いた。 来ていたのは、メール。 母親からの『今日はお父さんも私も遅くなる』とだけ書かれたメールが、ディスプレイには映っていた。 理駆はもう一度携帯を充電器に差し込み、枕に顔をうずめて溜め息をつく。 この環境で育ったせいか、理駆はその辺の女子よりも料理が上手だ。 それを知っているのは、逢氷だけだが。 「……うー……」 理駆は少し唸り声を上げ、身体を持ち上げた。 制服から着替えようとしたそのときだった。 ピン……ポーン… 理駆の家のインターホンが鳴った。 理駆はカッターシャツの第三ボタンまでを締め、急いで玄関に向かう。 「はい!」 理駆が勢いよく出迎えた先には、先程別れたばかりの逢氷が立っていた。 「…逢氷」 「理駆、中入ってもいいかな?」 逢氷は屈託のない笑顔で問う。 「ん?あぁ、いいよ」 「お邪魔します」 逢氷は理駆以外いない家に礼儀正しく挨拶すると、靴を脱いで理駆に着いていった。 「ねぇ、理駆! 今日泊まってってもいいかな?」 逢氷は唐突に理駆に質問した。 明日は休日だ。 断る理由も特にないので、理駆はそれを承諾した。 そして理駆はカッターシャツのボタンに手をかける。 「り、理駆! 洗面台貸してくんない!?」 逢氷の慌てた様子を変だと思いつつも、理駆は洗面台の場所を口で教えた。 教えてすぐに、逢氷は部屋から出て洗面台へ向かっていった。
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