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理駆は5組。
逢氷は1組。
二人はクラスが違うので、靴箱のところで別れた。
「今日も、一緒に帰ろうね!」
逢氷はとびっきりの笑顔で理駆にそう言うと、小動物のような走り方で階段を駆け上がっていった。
理駆はそれに手を振ると、教室に向かって歩き出す。
「理駆!」
「お、雅也ー!」
理駆に話し掛けた人物は、沖野 雅也(オキノ マサヤ)という。
雅也は、クラスの中で一番理駆と仲がいい。
尤も、逢氷には敵わないが。
「宿題やってきたかぁ!?」
「あぁ、それ逢氷にも聞かれた。
やってきたよ」
「逢氷?あいつって1組だろ?
1組に宿題なんて出てなかったと思うけどな~」
「……え」
「理駆ー!!」
噂をすれば、とはよく言ったもので。
教室のドアには逢氷が立っていた。
「あ、逢氷!今行く!」
理駆は逢氷に駆け寄ると、逢氷に質問を投げた。
「なぁ逢氷、お前俺の数学の宿題何で知ってたの?」
「………やだなぁ、昨日理駆が言ってたじゃん!」
逢氷の嘘は、理駆にバレることはない。
「そっか!あ~、なんか俺忘れっぽいな…」
「はは……。あ、そうだ!
僕、帰りに寄りたい所あるんだけど、理駆も付き合ってくれない?」
「おう!いいぜ!」
「ありがとう!じゃ、チャイム鳴っちゃうから戻るね!」
「おー」
逢氷は理駆の教室から離れ、自分の教室に戻ると、口角を上げた。
(……雅也とかいう奴、邪魔だぁ……)
逢氷は制服のポケットから、音楽プレーヤーらしきものを取り出す。
逢氷はイヤフォンをおもむろに耳につけると、頬杖をついた。
逢氷が聴いているのは、理駆のクラスでの会話だった。
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