足りない

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理駆は昨日の快楽にまだ酔っていた。 逢氷の熱が口の中を満たし、自分自身の熱を引き出されたようなあの感覚。 『絶交してくれないか』理駆がそう言ったときの逢氷の辛そうな顔は、理駆の脳裏に深く刻まれた。 逢氷が好きなのに。 理駆は自分の台詞を激しく悔いる。 逢氷のあの顔。 自分はどんな顔して言ったんだろう。 理駆の脳内には疑問符ばかりが溢れる。 昨日は散々拒んだくせに、またあの熱が欲しいと身体がねだっている。 だが、理駆には自分から逢氷に連絡する勇気がない。 逢氷を傷付けた。 今さら悔やんでもどうにもならないのに、理駆は後悔ばかりを募らせる。
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