傷付け合う、何人で?

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その後、二人は夜を共に過ごして、日曜日には理駆は帰ることにした。 逢氷はそれに反対はせず、理駆を玄関まで送っていった。 「じゃあね、理駆…。また明日」 「おう…じゃあな」 二人は何処か元気のない挨拶を交わして別れた。 逢氷は理駆の後ろ姿を見詰め、風になびく髪を掻き上げながら、理駆から目を背けた。 そして、家の中に入ろうとしたその時。 「……逢氷」 ぞわ、と逢氷の全身が冷えていくのを感じた。 逢氷が後ろを振り向くと、そこには無表情で立つ雅也がいた。 雅也は逢氷に近付いてくる。 逢氷は家のドアを開け、中に入って雅也から逃げようとした。 後は扉を閉めるだけ。 逢氷は力一杯扉を自分の方に引き寄せた。 だが、それも無駄だった。 雅也の足が扉の隙間から無理矢理入り込んでいて、そこから先は扉が動かない。 「何やってんだ!! ……早く帰れよぉ!!」 最早叫びと言ってもいいくらいの大声を上げ、雅也を帰らせようとする。 だが雅也は、外側のドアノブを持ち、自分の方へ動かした。 雅也より力の弱い逢氷は、それに応じたようにドアノブから手を離してしまう。 「…理駆に言ってねぇよな」 雅也は冷ややかな目で逢氷を見る。 「…言う訳ねぇだろ!どうせ言ったら理駆を犯すんだろ!」 「…よく分かってんじゃん」 雅也は逢氷の家の中に入ってくると、逢氷の腕を掴んで首筋を舐めた。 「……やめろ!!気持ち悪い!!」 逢氷はそう言って雅也を突き飛ばし、自分の部屋に隠れて鍵を掛けた。 階段をゆっくり上ってくる音がする。 逢氷は部屋のドアノブを握り締め、恐怖で脈打つ心臓を落ち着かせようとした。 そして、ドアノブが急にガチャガチャと物音を立て始める。 音は止まらず、早くなるばかり。 「あぁあああぁああ……」 逢氷は恐怖で全身がすくむ。 ドアノブを握るので精一杯だ。 「逢氷ぃ……開けろよ!!」 雅也の言葉に若干怯えながら、逢氷はドアノブから手を離し後ろへと後退する。 そして、逢氷の目に自分の机が飛び込んできた。 逢氷はうるさいドアノブの音に潰されそうになりながら、机の引き出しから何かを取り出した。
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