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「…あ、逢氷に着替え返し忘れた…」
理駆は帰り道中に急にその事を思い出し、逢氷の家へと引き返した。
逢氷の家に着き、インターホンを鳴らしたが、逢氷はいつまで経っても出て来ない。
痺れを切らした理駆は、逢氷の家に無断で入り、逢氷の部屋へと向かった。
階段を上り終え、逢氷の部屋がある方を見ると、ドアが開いていた。
「逢氷、勝手に入ってごめん…。着替え、返し忘れてたからさ…」
そこで理駆は、信じ難い光景を目にする。
雅也が逢氷の部屋で血を流して倒れている。
逢氷の全身に血が付き、逢氷はナイフを握って立っている。
理駆は逢氷の着替えが入った袋を音を立てて落とした。
逢氷はそれを無表情で見る。
そして、逢氷は理駆に言う。
「…こいつは、まだ死んでないよ」
理駆は逢氷が何を言っているか分からなかった。
「人ってさ、刺し殺しても3時間くらい経たないと死なないんだ。まだ刺してから10分ちょっとだから、死んでない」
逢氷の詳しすぎる説明は、理駆の耳には入らない。
「…こいつさ、僕を犯した主犯」
理駆は目を見開き、視線を逢氷から雅也に向ける。
「…こんなに早く僕を犯した奴の名前を言うんだったら、昨日言えば良かったかな…」
逢氷は微笑しながら理駆を見る。
理駆は恐怖で何も返せない。
「…僕ね、理駆が好きなんだ。だから理駆がこいつといるのが許せなかった。理駆を犯したのだって、こいつに汚される前に自分で汚せばいいって思ったから」
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