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赤ちゃんには生まれたという合図がある。
“泣き声”だ。
それを聞いた瞬間、皆が安心し、そして喜びに胸を膨らませる。
でも、この赤ちゃんは違った。
泣き声がどこかおかしかったのだ。
それがわかった時、赤ちゃんを取り上げた先生、村永先生以外は気付いていなかった。
もしかしたら…村永先生の頭の中にある不安がよぎった。
それでもどうしよう。頑張って力んでこの子を産んだ母親に、分娩室の外でまだかまだかと落ち着きのない父親にどう説明すればいいか、わからなくなっていた。
泣き声がない赤ちゃん。
きっとこの子の両親は悲しむだろう。
もしかしたら、この子は愛してもらえないかもしれない。
そんな不安を抱いて、赤ちゃんを抱いていると、
「ねぇ、村永先生。赤ちゃん抱いてもいいですか?」
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