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『嬉しい、嬉しいわ。
また、こんな風に人とお喋り出来るなんて。』
鏡は嬉しそうに声を上げます。鏡は少女と同じ声で少女にこう聞きます。
『あなたはだぁれ?』
「私はシンデレラ。」
『シンデレラ。
そう、とっても可愛い名前、羨ましい…。』
シンデレラは鏡に向かって同じ質問を返します。
「あなたは?」
『私…分からないの、忘れてしまったわ。』
少し落ちた声が響き、シンデレラは申し訳なさそうに、ごめんなさいと、謝ります。
『ううん、いいの。
だってシンデレラが来てくれたもの、それだけで嬉しいわ。
また、人とお喋りできるなんて幸せだわ。』
鏡はコロコロと表情を変え、それがシンデレラと同じ姿だという事と、それが鏡だという事を忘れてしまいそうになるほど、違う存在にすら感じます。
『そう、そうだわ、お願い。
私、お友達が欲しいの、シンデレラとは親友で…。
そうね、他の子も紹介して?』
嬉しそうに話す鏡に対し、シンデレラは不満気な声を漏らす。
「ごめんなさい、友達はいないの。
私はいっつも家で家事ばっかり…、外なんて買い物でしか出られないわ。」
そうしてシンデレラはこうも続けます。
「それにお母様とお姉様たちはお城にパーティーに行ってしまったわ。」
『あら、どうして?シンデレラも行けばいいじゃない。
どうして行かないの?』
鏡の言葉にシンデレラは酷く悲しい気持ちになりました。
「ドレスが無いの。それに、私は掃除をしなくっちゃいけないわ。」
『そんなの心配しなくても大丈夫よ。』
鏡はシンデレラらしくない笑顔でそう言いました。
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