灰かぶり姫と魔法の鏡

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辺りは宝石のように輝き、夢にまで見たその中心で、誰もが夢にまで見た王子が目の前で笑い、踊っているとなると、シンデレラはこの宝石箱の中で幸せ過ぎる夢でも見ているのではないかと思いました。 周りにいる女たちは二人の姿に息を飲み、始め、嫉妬の念を向けていたのすら忘れて見入っていました。 その中にはシンデレラよりも先に来ていたお母様とお姉様たちの姿さえ見えていました。 「あぁ、なんて美しい…貴女の名前を私に教えてくださいますか?」 膝を折り、手の甲にキスを落とす王子にシンデレラはうっとりと口を開きます。 「私…私の名前は…」 『シンデレラ、ごめんなさい、もう時間なの、12時を過ぎたら魔法がとけて元の姿に戻ってしまうわ。』 頭の中に鏡の声が響き、その言葉にシンデレラは背筋が凍りつきました。 11時58分、後2分足らずでこの麗しい王子の前で、あのみすぼらしい姿を見せてしまうと、シンデレラは王子の問いに答えることをせずに城を飛び出します。 城の前の長い階段で美しいガラスの靴が脱げてしまったけれど気にしている暇はありません。 たとえ王子に声をかけられようと、止まることは許されませんでした。 かぼちゃの馬車に着く頃にはいつもの灰かぶりの姿に戻り、王子の声も聞こえませんでしたが、馬車に乗り込み王子の唇の触れた手の甲をギュッと抱きしめ、幸せそうに笑みを漏らしました。 「王子様…鏡さん…幸せな一夜をありがとう。」 定期的に揺れる馬車の中でシンデレラは本当の夢の中へと堕ちていきました。
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