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「………」
形代を黙って灰皿に移す由貴。
夜毎、舞姫に対して嫌がらせに等しい踊子の術。
募る苛立ちと憎しみが、皮肉にも生きる源。
舞姫を嫌っている訳ではないが姉妹間の事情を知っているからこそ、あえて踊子の行為を止めさせない由貴。
「(まだ、あの子の命に関わる程じゃないからな…)」
由貴の眼から見て、児戯に等しい踊子の術。不完全な覚醒。
知られざる、由貴のもう1つの顔。
舞姫はおろか、踊子すら計り知れない彼の心の底。
「由貴さんは、こんな私と一緒に居て嫌じゃないの?」
「僕にとって君の傍は、居心地が良いんですよ」
由貴の微笑に、少し赤らむ踊子の頬。年相応に見える表情。
そんな踊子を見て、更に目元が和む由貴。
最奥に冷たい光を宿した、深遠を思わせる黒い瞳。
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