加護の籠

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「今時、門限なんて有り得ないっての!」 午後21時10分前。路地を全速力で駆け抜ける少女。 二つに分けて縛られた栗毛。緑がかった薄茶の瞳。中肉中背。容姿は良い方だが、いかんせん落ち着きが無く、やや気短。 彼女の名は、舞姫(マキ)。 趣味は寝る事、食べる事、歌う事。 親元を離れ、宇津(ウヅ)神社に身を寄せていた。 どうにか敷地内に入った舞姫。ほぼ走り幅跳びの要領。 丁度門限五分前。 「やった!」 安堵した瞬間。 「おい、餓鬼縛り」 渋くて低い声に恐る恐る振り返ると、ぶつかった視線。 百八十強の長身。金色がかった茶髪。切れ長の鳶色の瞳。黙って立っていれば、端正な容姿。 舞姫が一番苦手な人物の龍司(リュウジ)。宇津神社の跡取り。 「ただいま帰りました…」 「常に十分前行動を心がけろ、と言った筈だが?」 「…すみません」 「さっさと飯食って風呂入って、寝ろ」 「…はい」 そそくさと家の中に入る舞姫。
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