深淵の覇者

10/11

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
「ぐああああああっ…」 バキバキバキと骨の折れる音が聞こえる。 「口ほどにもない」 倒れてピクリとも動かない優を見下してメロウスは美歌の方へと歩き出した。 「あ………優……」 倒れた優を見て美歌は顔を真っ青にしていた。 ーーそんな…… ーー優…優… 美歌の瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。 「残るはお前だけだ。安心しろ。楽に死なせてやる」 「ちょーっと待ちな」 空から声が響いた。 上を見るとそこには一人の男が立っている。 「……誰だ?」 「俺の名はスライア。お前に聞きたいことがある。あいつらをやったのはてめえか?」 スライアと名乗る男は優と浩介を指差した。 「だったらどうした」 「いや、別にどうもしないけど?あいつらの敵をとろうなんてことはこれっぽっちも考えてない。ただな……」 会話の途中でスライアの足から紅蓮の炎が立ち上る。 ーーあの炎……安藤? ーーいや違うわ。あの人は自分の事をスライアと名乗っている。 「女を傷物にしちゃあいかんだろ」 紅蓮の炎が龍となってメロウスを呑み込んだ。 「なっ……!」 威力、スピードがメロウスの予想の範疇を超えていたためメロウスは炎をもろにくらってしまった。 ーーこの炎……さっきの炎使いの奴よりも威力が強い!? ーーくそ!焼き尽くされる! メロウスは炎から脱出した。 しかし体は所々火傷を負っており服も数カ所焦げて消し炭になっている。 「貴様…何者だ?」 「だから言ったろ?スライアだって。まあ強いて言うなら……」 ニイと笑顔を浮かべてスライアは言った。 「炎の皇帝【ファイアーエンペラー】だ」 「炎の皇帝……だと?」 「ああ、そうだ」 ーー炎の皇帝か…… ーーまとめて殺るにはちょうどいいが…… ーー………あいつの炎は厄介だ 「ふっ。ここは退いておこう」 「話のわかる奴で助かったぜ」 「こちらにも考えがあるのでな。だが……また来るぞ。今度は仲間を揃えてな」 メロウスは影に包まれその場から姿を消した。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加