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「それじゃ、行くわよ」
途端にマスターの周りの空気が変わった。
今までとはまったく違うピリピリと体を刺すような鋭さを持った空気へと変化した。
ーーマスター……本気だ…
美歌も木刀を強く握り直し意識を集中させる。
「………」
マスターがジリジリと近づいてくるのを美歌はしっかりと分かっていた。だが、それでも美歌は一歩も動かない。
そしてマスターは木刀を勢いよく振りかざした。
美歌はそれを体を横にしてギリギリのところで躱し、突きを放つ。
だがそれはマスターの顔を掠めるだけで決定打とはならず、マスターは連撃を叩き込む。
「くっ…!」
ーー防ぎきれない…!
ついに美歌が手にしていた木刀はマスターの一撃で弾き飛ばされてしまった。
「これで三本目ね」
「そんな…」
美歌はその場にペタンとしゃがみこんでしまった。
「少し休憩でもしましょ!」
気がつくと時計はすでに昼の時間を回っていた。
「私、お弁当作ってきたのよ。さ、食べて食べて!」
武道場の真ん中にビニールシートを広げ、どこからか弁当箱を取り出した。
「……はい」
美歌は苦笑いしつつも、ビニールシートの方へと足を進めた。
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