修行開始~真実の風~

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美歌は優の家に着いたが、玄関にポツンと立っていた。 ーーただいま。でいいのかな? ーーでもここは私の家じゃないし…… 「はあ……どうしよう…」 「何してんだ?」 「きゃぁっ!」 突然後ろから声が聞こえ、後ろを振り向くと優が立っていた。 「あ、優。おかえり」 「うん。ただいま。ってか、扉の前で何してんだ?」 「いや…その…ちょっとね」 うまく誤魔化そうと思ったが、マスターの言葉が頭に思い浮かんだ。 『素直になれば風は真実へと導いてくれる』。 美歌は意を決し、口を開く。 「その…家に入る時ってただいまでいいのかなって…。ほら、私って居候だし…だから…どうすればいいか…」 歯切れが悪く、少し俯いている美歌だったが優はおおきくため息をつき、美歌の額にデコピンをした。 「痛っ!」 「バーカ。何変なこと考えてんだよ」 「変なことって、私はすごい悩んでたのよ!?」 額を抑えながら美歌は反論する。だが優はそれを受け流し、そして笑みを浮かべた。 「そんなもん、『ただいま』でいいに決まってんだろ」 あっさりと言い、優は扉に手をかける。 そして扉は勢いよく開かれ、家の中に「ただいま」と優の声が響いた。 「おかえりなさい。あら、美歌ちゃんも帰ってきたのね。おかえりなさい、美歌ちゃん」 優の母が笑顔で玄関の方へとやってきた。 「ほら、美歌」 優に呼ばれ、美歌はハッとし優の母を見る。 「た……ただいま」 少し照れながらも美歌ははっきりと言葉にした。 それを聞いた優の母はさらに笑顔を浮かべ「おかえりなさい」と言った。 その時美歌は確かに家族の温かさを感じた。
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