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(…俺、何でここにいるんだ?)
銀時は真選組の屯所にいた。副長室にある寝室。しかもご丁寧に敷かれた布団の上で正座していた。(…いや、そもそも何故こんなことになったんだっけ?)
銀時はつい1時間程前のことを思い出し始めた。
その日、銀時は街中をぶらついていた。依頼が来ないのはいつものことだったがこの1週間、日雇いの仕事も見つからず、ついに金が底を尽き始めていた。
(…マジで仕事探さねぇと…明日からホームレスの仲間入りだぞ)ふらふらと公園のベンチに腰掛けうなだれる。
暫くすると目の前に人影が…。ゆっくり見上げると煙草をくわえながらこちらを見下ろしてる土方が立っていた。
「…こんな所で昼間っから何やってんだ、万事屋…。」
冷やかな目で銀時を見る土方。銀時が顔をしかめる。
「…お前には…。」
関係ねぇと言い掛けた途端、銀時の腹の虫が鳴る。
「………」
「………」
お互い暫く無言。土方がため息を付いた。
「…腹減ってんのか?」
銀時がカアッと赤くなる。
「…うるせぇな!…仕方ねぇだろ…日雇いのバイトも無くて…まともに食えてないんだよ!」
プイッと顔を背ける銀時。
「…奢ってやろうか?そこの定食屋で。」
そう言って店を指差しニヤリと笑う。
「じょ…冗談じゃねぇ!てめぇの施しは受けねぇよ!!」
そう言ってベンチから立ち上がった時、空腹の余り立ち眩み、倒れそうになる。
「…!おい!」
とっさに土方が銀時の身体を支える。
「…無理すんな…おとなしく奢られろよ…な?それに飯奢ったくらいで恩に着せるつもりはねぇからよ。」
そう言って一瞬優しい笑みを銀時に向ける。銀時の胸がドキッと高鳴る。
(…あれ?何だこれ…ドキドキが収まらねぇ…)
胸を押さえる銀時。
「…胸、苦しいのか?」
土方が銀時の顔を覗き込む。
途端、銀時が真っ赤になって顔を逸らす。
「な、何でもねぇよ!」
そう言って土方から離れる。
「…そこまで言うなら…しょうがねぇ…奢られてやるよ!」
顔が赤いのを悟られない様に先を歩く銀時。苦笑しながら後をついて行く土方。
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